公益財団法人 えどがわ環境財団

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カンガルー病のお話

 

 

みなさま、ワラビーのゆかりの袋の仔はもうご覧になられましたか?

 

もし、もう見た!!という方がいらっしゃったら、かなりラッキーです。

 

先月の1月20日に顔出ししたゆかりの仔ですが、その後はなかなかコンスタントに顔出しをしてくれず、私たち職員もなかなか見ることができません。

 

 

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さて、ワラビーはお腹の袋(この袋のことを「育児嚢」といいます)で仔を育てることは皆さまもよくご存知だと思います。

 

このように育児嚢のある動物は「有袋類」と言われ、現在の一般的な哺乳類である「有胎盤類」(胎盤が発達していて子宮内で胎児を育てる生物)とは解剖学的、生理学的に異なる面が多いです。

 

なかでも獣医として苦労するのは、有袋類は有胎盤類と比較すると代謝率が低く、体温が低いため、感染に弱いということです。

 

特に直面する機会が多いのが「カンガルー病」と言われる顔の腫れる感染症です。

 

これは、土壌や動物の腸管、口腔内などに普通に存在する細菌が、虫歯や歯周病の悪化や、歯の抜け替わりや口の中の傷を介して感染し化膿し、顎の骨まで達してしてしまう状態です。

 

化膿が悪化すると餌が食べられなくなって死亡したり、化膿巣から細菌が血流にのって全身にばらまかれ、化膿性肺炎をひきおこしたり、敗血症になったりして死亡してしまう可能性もあります。

 

病巣は、化膿が壊死して肉芽組織に置換されると硬いこぶのようになります。

 

自然動物園のワラビーのぴーちゃんも、先日、このカンガルー病にかかってしまいました。

 

 

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左の顔がぱんぱんに腫れてしまったぴーちゃんに麻酔をかけて口の中をみると・・・.

 

虫歯、歯石などの問題があり、臼歯(奥歯)の根元からは膿と血液がドロドロと出ていて、まさにいま化膿しています!!という状況でした。

 

そこで、抜歯をして抗生剤を打ち、腫れはかなり治まりましたが、残念ながらぴーちゃんの顔は完全に元通りにはなりません。

 

飼育担当と話し合い、今後、最も虫歯の原因になりやすいパンはワラビーの餌のメニューからなくすことにしました。

 

ぴーちゃんは現在も治療中で、抜歯した歯茎の傷が塞がるまで、念のため展示場には出ていません。

 

もう少しでまた展示場に出られますが、ちょっと顔がアンバランスなところもどうか可愛がってあげてください。

 

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 なお、カンガルー病は個体から個体へ感染する病気ではなく、ぴーちゃんから他の個体にうつることはありませんのでご安心ください。

 

 

(V)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年02月03日

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