自然動物園ぶろぐ
海の贈り物
世界で一番美しいカメとも呼ばれるホウシャガメ。
名前の由来にもなった、その美しい放射模様を刻む甲羅に必要不可欠なもの…
それはズバリ、「カルシウム」。
人間でも骨の形成に必要な栄養素としておなじみですが、カメにとっても体の
ほとんどを覆っている甲羅を形成する非常に重要な栄養素です。
そんなカルシウムですが、動物園では基本的に粉末のサプリメントをエサの
野菜にまぶして与えています。
(怪しい粉ではありません)
しかし、それでもやはりカルシウム不足は気になるもの。
サプリメント以外でも、何かカルシウムを補えるいい方法はないだろうか…?
そこで思い出したのは「牡蠣(カキ)殻」…あの「海のミルク」こと牡蠣が
入っていた殻には良質なカルシウムが含まれているだけではなく、そのまま
かじることでクチバシ(カメには歯は無く、代わりにカミソリのように鋭い
クチバシを持っています)の伸びすぎを防いでくれるという効果がある
という話。
それって本当?
そもそもあの固い牡蠣殻を、ホウシャガメがかじってくれるのでしょうか。
カルシウムの補給手段の検討というのもあるのですが、単純に好奇心もあって、
ちょっと試してみることにしました。
さて、そうと決まればじーっとしててもどーにもならない!
と、いうことで牡蠣殻が手に入らないか聞いて回ったところ、ありがたいことに
牡蠣殻と、なんとホタテの殻、アワビの殻まで入手することができました
(提供してくださった皆さま、ありがとうございます!)。
↑手に入った貝殻
これはもう夏休みの自由研究。
ホウシャガメは牡蠣、ホタテ、アワビの殻を食べるのか!?
というわけでまずは下準備。
最初に殺菌・消臭を兼ねて煮沸します。
調理室に磯の香りが漂います。
次に、天日干し。
しっかり日光に当てて乾燥させます。
さて、準備が整ったら、いよいよ与えてみましょう。
はたして食べてくれるでしょうか!?
まずは牡蠣殻から与えてみます。
<動画>
…食べた!
しかも試しにかじってみたとかではなく、バリバリと続けて食べていきます。
海の幸である牡蠣の殻をリクガメであるホウシャガメが食べている…
なんとも不思議な光景ですが、これだけかじってくれるのであれば使わない手は
ありません。展示場に牡蠣殻を置いておいて、必要に応じて自分から食べて
もらうことで、カルシウムを補う一助になるはずです!
ちなみにこの後ホタテ、アワビの殻を与えてみたのですが、すぐには食べて
くれませんでした。
しかしせっかくなのでしばらく展示場に置いて様子を見ることとします。
そしてしばらく置いていたものがコチラ。
ホタテは牡蠣殻ほどではありませんが、貝殻のフチの部分にかじられた跡が。
一方アワビの殻はというと・・・
ほぼ、無傷。
ビフォーの写真を撮っていなかったため正確には分かりませんが、
アワビの殻はさすがに固く、かじっていないようでした。
親ガメが食べるなら仔ガメにも!と思ったのですが、仔ガメに牡蠣殻は
固すぎると思い、仔ガメにはインコ、オウム用として市販されている
「カトルボーン」を与えてみました。「カトルボーン」とは「コウイカ」
というイカの甲羅を加工したものです。こちらも海の恵みですね。
さて、仔ガメたちの反応はというと…
みんな興味津々。
右上の個体はすぐにかじり始めました。
その後しばらく置いておくと・・・カルボーンは、こうなりました。
左が未使用品、右がケージにしばらく入れていたカトルボーンです。
右のカトルボーンの周辺がかじられて、ギザギザになっているのがわかると
思います。仔ガメたちも、しっかりかじってくれているようです!
結論を言えば、やはり与えるなら牡蠣殻がベストなようです。
牡蠣殻を与えることでクチバシの伸びすぎに効果があるのかまでは
まだ分かりませんが、少なくともカルシウムを補うことに関しては
一定の効果が期待ができそうでもあります。
ホウシャガメの展示場に貝殻が落ちている様子は一見するとちぐはぐに
感じられるかもしれませんが…これはホウシャガメにとって大切な
海の贈り物。ホウシャガメの健康のためだとご理解いただければと思います!
(M)
2021年08月25日