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自然動物園ぶろぐ
くるみちゃん、ありがとう
お知らせでもお伝えした通り、2024年6月5日に残念ながらベネットワラビーのくるみが死亡しました。
以前のぶろぐでもお伝えした通り15歳の、人間で言うと90歳以上のおばあちゃんでした。
くるみは以前から心臓に疾患の疑いがありました。
過去、何度か朝に獣舎へいくと倒れていることがあり、正直助からないのでは??と思ったこともありました。
しかし、その度に驚くほどの回復力を見せ、数日後にはいつものように展示場に出て、餌を食べる姿を見せてくれました。
その頃からくるみにはものすごい生命力を感じていました。
しかし、歳を追うごとに徐々に食べられる量が減っていき、今年に入ってからは輪をかけて食べられる量が減り、以前は好んで食べていたものまで食べられなくなってしまいました。
また餌を食べる時に口の中を気にする素振りが増えてきたため、おそらく口の中に何か問題を抱えているのだろうと推測されました。
本来であれば麻酔をかけて口の中を見たり、色々と検査をして原因を追求しますが、老齢であることに加えて心臓に疾患の疑いがあるため、麻酔などはリスクが高く積極的な治療はできませんでした。
そのため、その時その時で食べられるものを与え、普段は与えていないパンやふかし芋、すりりんごや野草類、スイカやスプラウトなど、色々なものを試して与えました。
また、少しでも楽に過ごせるように、皮下補液を行ったり、痛み止めや消炎剤などの投与を続けました。
日に日にくるみの状態は悪くなっている様に感じ、餌もほとんど食べられない日が続きましたが、それでもくるみのすごいところはいつものように展示場に出て、いつものように休み休み探索したり、時には落ち葉を食べてみたり、お腹のポケットの毛繕いをしたりと変わらない日常を過ごしている様に見えるところでした。
くるみは人工哺育で育ったからか、担当者が展示場に入ると近寄ってきて「撫でて!」と言わんばかりに担当者の手を掴んできます。
撫でてやると満足げに頬をすりすりとしてくれるのですが、死亡する1週間前でも撫でてやると変わらずに頬をすりすりしてくれました。
餌も食べられず辛い状況のはずですが、変わらず日常を過ごそうとする様子から、「やはりくるみは生きる力が強いな」と再認識させられました。
そして、6月5日に歴代の担当者や副担当者、獣医師が見守る中で旅立っていきました。
動物園では通常、動物が死亡すると解剖を行います。解剖をすることによって、死因や他に悪いところはあったのかなど色々なことが分かり、今後の飼育や治療に活かすことができるからです。
くるみは解剖の結果、上顎の奥の方に大きな腫瘤があり、腫瘤には膿瘍もありました。その膿は歯肉だけにはとどまらず、顎の骨や鼻の方まで広がってしまっていました。
また、その後の病理検査(専門機関によって、採取した細胞や組織などを顕微鏡などを使って詳しく検査し、病気の診断や原因を究明すること)
によって、上顎の腫瘤は扁平上皮癌と言う癌だったことが分かりました。
通常、癌が発見された場合は、治療として外科切除を行うことが多いですが、先述の通り保定(ほてい:動物に負担がないように安全に動きをおさえること)
や麻酔などは難しいため、仮に癌が発見できたとしても、やはり積極的な治療は難しかったと思われます。
餌が食べられなくなってしまったのは、癌及び、癌起因の膿瘍が原因だと思われます。
この癌が無ければもう少し長生きできたかもしれないと思うと大変悔やまれます。
現担当者の筆者が江戸川区自然動物園に転職してから7年間、ずっとくるみの飼育をさせてもらってきました。
初めて担当するワラビーについての、魅力や管理の難しさ、おもしろさなど色々なことをくるみから学びました。
くるみから学んだことをこれからの飼育管理や来園者の方へイベントなどを通して還元していきたいと思います。
〈向かって右がくるみ〉
くるみちゃん、たくさん頑張ったね。
長い間ありがとう。
ゆっくり休んで下さい。
(Y)
2024年06月30日